モニターツアー③ 生地屋見学と交流会

百聞は一見にしかず。生地屋見学

窯元さんを見学させて頂いた後は、いよいよ生地屋さんに向かいます。坂を登っていたはずが、工房の入り口を過ぎると今度は下りになりました。山の斜面に建てられた家屋独特の造りです。面白いですね。

  

とんぱんに、色々な形の型が置かれています。どんな商品の型なんでしょうか。外目からは想像がつきません。

 

さて。午前中からみなさんの頭に居座り続けていた「?」が解明されるときが来ました。 説明して下さるのは、生地屋の藤田さん。よろしくお願いします!

 

「これが陶土です」と見せて下さったのは、四角い板のようなもの。これを撹拌し液体化して、生地の素を作るそうです。 陶土に含まれる水分量が生地の出来上がりを左右するようで、その調整も大事なお仕事なんだとか。それでは「生地」が造られる工程を見てみましょう。 工房に足を踏み込むと、畳一帖分程の作業台の上に型が並べられ、その中央に細長い“樋”のようなものが置かれています。

この樋、午前中に見た空き工房には残っていなかったのですが、これが地面に埋まった壺と対になる役目を果たします。 どういう風に使うかというと、まず、液体にした陶土を型に流し込み、しばらく経って固まったら、型を引っくり返して樋の上に。(ここから下の写真5枚は、藤田さんとは別の生地屋さんのもの)

  

すると、型に収まりきらなかった生地がとろとろ〜と樋を伝い、その先に置かれた容器に溜まって行く、という仕組み! こちらではバケツが使われていますが、これが、地面に埋まっていた大きな壺の正体です。

 

余分な陶土を排出したら、型から生地を取り出して、不要な部分を切ったり削ったりして形を整えます。 1ミリ単位の正確さが求められる職人技です。 ここで藤田さんが生地を一つを取り出し、ろくろにセットしました。と思ったら、ヘラのようなものを押し当てて…

 

分かりましたか? ひょいと、「とっくり」部分を切り取ってしまいました。あまりの早業に、TVのカメラマンさんも苦笑いでアンコール(笑)

  

藤田さんが「とっくり」を切り取ったのは急須の胴体部分。これに取手などのパーツを接着して形にしていきます。ちなみに、中央の写真は急須の“茶こし”。型を取り、錐のような道具で穴を開け、それを胴体にはめ込むんです。

  

まだ柔らかい胴を繰り抜き、茶こしをはめ込む作業に挑戦。これもまた、藤田さんがするとあっという間で簡単そうなのですが

 

やはり、そんなことはないようです(笑) これを滑らかに整え、急須の「生地」が完成。実際の製品と並べてみました。

比べると若干、製品の方が小さいのが分かります。焼成すると縮んでしまうため、この収縮率を計算するのがキモだそう。こうした感覚もまた、培われた職人技の一つです。

みなさん、色々な謎が解けて実にすっきり。これで、大体の設備が理解できるようになりました。藤田さん、お忙しい中とても丁寧に分かりやすくご説明頂き、本当にありがとうございました! さて。いよいよ1日目のプログラムも終盤です。あともう少しなので、記事をお読みのみなさんも参加者の気持ちでお付き合いをお願いします! 生地屋さんを後にして、次に向かったのは「工房青」さん。現在も稼働中の窯元さんで、ご自身でギャラリー(販売所)を持たれています。そしてここは、ツアーに参加されているドイツからの移住者、ミリアムさんの勤務先でもあります。

 

今日はお休み、という無人の工房内を、ミリアムさんにご案内して頂きました。

  

同じ窯元でも、やはり紀窯さんとは違う造り、雰囲気です。工房毎に個性があって本当に面白い。こうしたところを空き工房でも活かしていけたらいいですね。

工房と道を一つ挟んで、すぐ目の前にギャラリーがあります。 入り口は、間口一面折り畳むことができる、オリジナルのガラス扉。天井は一部を透明瓦にすることで天窓を設け、明るく開放的な空間に。ロールスクリーンで、簡易的に土間と板の間部分がゾーニングできるようにまでなっています。すごい!

  

こちらは元々工房だった訳ではないそうですが、空き工房リノベ後の完成モデルの一つとして見れば、中々イメージが湧きづらい現在の空き工房を、素材として見る目が養われるかもしれません。

 

中尾山最後の訪問先は、波佐見焼を中心に、様々な窯元の作品が展示・販売されているギャラリー、「赤井倉」。

 

商品の豊富さも嬉しいですが、明治に建てられたという家屋も一見の価値あり。

丁寧に補修管理され、飴色に艶めく古民家は、中尾山の景色によく似合います。

 

 

元自動車工場にて交流会

この日は、上着を脱いでしまう程の快晴ぶりで…なだらかとは言え、緩急ある中尾山を一時間半掛けて散策すれば結構なエネルギー消費になりました。バスに乗り込むと、みなさん少しお疲れのご様子。一先ずホテルにチェックインし、夕食までにしばし休息タイムです。

 

こちらのホテルプリスヴィラ、宿泊すると、徒歩1分の温泉「湯治楼」の入湯券が付いてきます。交流会までの1時間半、温泉に浸かってもよし、近隣を散歩してもよし…。

 

日が暮れ、いざ交流会へ!会場は、元自動車工場をコンバージョンしたオシャレなレストランです。

 

ここからもう一人、熊本からの移住者、綿島さんも参加。それぞれが質問を投げかけ合い、疲れとお酒のほろ酔いも手伝って、なんとも和やかで和気あいあいとした交流タイムになりました。

 

和気あいあいとし過ぎて、予定していた時間を30分ほどオーバー。今まで全て時間通りだったのですが、最後の最後でずれ込むことに…(笑)それだけ楽しかったということでしょうか。よく歩き、よく話し、よく考えて、たくさん笑った一日でした。 みなさん、お疲れ様でした!

 

 

次回予告

1日目はいかがでしたか?中々、ディープな波佐見旅を経験して頂けたのではないでしょうか。

2日目は、波佐見「空き工房バンク」チームが取り組むDIY工房の見学や、普段は入ることができない九州最大規模の木造洋館造り・旧小学校講堂、そして、今大注目の、空き工房をコンバージョンした一大観光スポット「西の原」をご案内いたします。

お楽しみに!

>>波佐見空き工房バンク公式サイト

text/いしだ